−堺の地名にゆかりのある唯一の植物−
ハマデラソウは、堺の地名のついたたった1つの植物です。
日本国内では、浜寺付近にしか生育していない珍しい植物です。
場所:堺市都市緑化センター
写真:橋本 一三五 氏提供
ハマデラソウは一年草で5月〜6月に芽を出します。
茎は細くてよく枝分かれし、40〜70cmに延び、横に這うように茂ります。葉は、対生で細長く、茎にも柔らかい灰白色の綿毛がはえています。
夏には茎の先に長い花茎を延ばし、花びらのないつぶつぶの花がかたまって穂になってつきます。
場所:堺市都市緑化センター
写真:橋本 一三五 氏提供
1932年に牧野富太郎博士が、浜寺の海岸で今までに見たことのない植物を見つけました。調べたところ、北米南部原産のヒユ科の植物で、博士は最初の発見地を記念して、この植物の和名(日本名)をハマデラソウと名付けました。
おそらく、大阪に荷揚げされたアメリカからの積荷についてきた種子が浜寺に落ちて芽を出し、帰化植物として定着したものだと思われます。
戦後は、浜寺付近の海岸を中心に、隣の諏訪ノ森や、高石の海岸で生息していました。しかし、都市化による地域の開発が進み、1958年から始まった臨海工業地造成による埋め立てのために、ハマデラソウは姿を消し、1960年頃には堺市内ではまったく見られなくなりました。
1986年に堺市大仙公園で全国植樹祭が開催されることになり、「堺にゆかりのハマデラソウをよみがえらそう」との話が持ち上がりました。泉大津市助松の海岸近くの墓地に育っているハマデラソウを見つけ種子を採取して堺植物同好会で栽培を始めました。
現在、浜寺と名のつく小・中学校6校と、堺市都市緑化センター、浜寺公園の協力を得て、ハマデラソウを保護し、栽培しています。
場所:堺市都市緑化センター
− 堺植物同好会 ハマデラソウを守る会 -
ハマデラソウは美しい花が咲くでもなく、よい香りがするわけでもない何の変てつもない雑草です。この堺の地名のついたたった1つの植物ですが、自然のままでは育ちにくく、人が守ってやらなければ育ちません。
植物を大切にすることは自然を大切にすることにつながります。 現在、ハマデラソウは人の手助けなしには日本から消え去ってしまうでしょう。生物の「種」を守ることからも、人が守り育てることが不可欠であり、堺の人々の責任だと考えています。
そして、堺のゆかりのあるハマデラソウを守り、大切に育てる“気持ちと努力”を、堺を愛する郷土愛につなげる人づくり教育に大きく役立たせたいと思います。